🔍 話題深掘り ● 注意 事件発生 📅 2026年7月2日 公開日 ✏️ 2026年7月6日

顔を隠せばSNSに載せても大丈夫?──修学旅行の写真投稿で学校アカウントが停止された話

2026年7月、荒川区の区立中学校が修学旅行の様子を学校の公式Xに投稿したところ、駅で待機する生徒の写真をきっかけに賛否の議論が広がり、区がアカウントを停止して謝罪した。区は「顔は写っていないが、いつ・どこで・何をしているかが分かる」点を問題視している。顔を隠すだけでは安全とは限らない理由と、学校・家庭での写真投稿の考え方を整理する。

学校の公式SNSに投稿された生徒の写真が拡散したことを示すイメージ

「顔さえ写っていなければ大丈夫」──その感覚、まだ通用すると思っていませんか?

学校が修学旅行中の子どもたちの様子として投稿した写真が拡散され、区が学校の公式Xアカウントを停止する事態になりました。写っていたのは、顔ではなく「いつ・どこで・何をしているか」でした。

🟨 この記事のポイント(1分で理解)

  • 2026年7月、荒川区の区立中学校が修学旅行の様子を学校の公式Xに投稿し、引用投稿をきっかけに拡散。駅での待機方法などをめぐって賛否の議論が広がった
  • 荒川区は「生徒の顔は写っていないが、いつ・どこで・何をしているかが分かる」ため不適切と判断。過去の修学旅行画像も掲載されていたため、学校の公式Xアカウントを停止し、謝罪した
  • 顔が写っていなくても、制服・場所・日時を組み合わせれば、学校や集団の現在地が分かり、ほかの情報と結び付けば個々の生徒の行動まで推測されうる
  • 都立学校にはSNS運用の通知があるが、都教委は区市町村立学校向けの共通ガイドラインは設けておらず、自治体や学校によって運用に差がある状況も浮かんだ

荒川区の学校で実際に起きたこと

2026年7月、都内・荒川区の区立中学校が、修学旅行で移動する生徒たちの様子を学校の公式X(旧Twitter)に投稿しました。公共交通機関で移動する前とみられ、駅構内の広場で生徒たちが制服姿で座って待機している写真でした。この投稿が「校外行事で駅の床に制服で座らせるのはどうなのか」というコメントとともに引用され、拡散。駅での待機方法などをめぐって賛否の意見が寄せられました。

反応が広がったことを受けて、荒川区は7月2日付でホームページに「SNS上に掲載されている中学校修学旅行の写真の掲載等について」というお知らせを掲載し、謝罪しました。区は、掲載していた写真は生徒の顔は写っていないものの「いつ、どこで、何をしているか」が分かる内容で、現代のネットリテラシーや個人情報保護の観点から不適切だったと認識していると説明。過去の修学旅行の画像も掲載されていたことから、当該アカウントを停止したとしています。今後は保護者専用ホームページでの公開を予定していますが、区は公開方法や掲載内容についても、改めて慎重に検討するとしています。

ここでは、二つの論点を分けて考える必要があります。SNS上で最初に議論になったのは、生徒を駅の床に座らせていたことでした。一方、荒川区が公式に問題としたのは、床に座っていたことではなく、修学旅行中の生徒たちの日時・場所・行動が、公開型SNSから分かる状態になっていたことです。この記事では、後者の「情報公開のあり方」に絞って考えます。

なお、今回の投稿によって生徒個人が特定されたり、具体的な被害が発生したりしたとは、公式発表や報道では確認されていません。区が問題にしたのは、被害が起きる前の情報発信のあり方でした。

なぜ重要なのか

これは「議論になった学校」だけの話ではありません。我が子の写真をSNSに載せている、すべての大人に関わる話です。

この件でまず押さえたいのは、投稿したのが悪意ある第三者ではなく、学校生活の一場面を公式アカウントで発信した学校側だったという点です。学校生活の様子を伝えるための発信であっても、公開範囲や写り込む情報の設計を誤ると、想定外に拡散してしまう。これは、運動会や旅行の写真をSNSに上げる保護者にも、そっくりそのまま当てはまります。

そしてもう一つ。区が問題にしたのは「駅の床に座らせたこと」そのものではなく、日時・場所・行動が特定できる写真を、誰でも見られる形で発信したことでした。ここが今回の核心です。

顔を隠すだけでは、安全とは限らない理由

「顔にモザイクをかけたから」「後ろ姿だから」大丈夫──そう考える人は多いはずです。しかし、顔が写っていなくても、次のような情報が組み合わさると、学校や集団の居場所は十分に絞り込めてしまいます。

制服・場所・日時を組み合わせることで、学校や集団の現在地が分かり、ほかの情報と結び付けば、個々の生徒の行動まで推測される可能性があります。これは学校だけでなく、個人が自撮りや旅行の写真を上げるときにも起きる問題です。写真に写る背景・看板・制服からの特定は、netliteracy.jpでもくり返し取り上げてきたテーマです。

なお、こうした写真が法律上の「個人情報」に当たるかどうかは、特定の個人を識別できるかなど、具体的な状況によって異なります。ただし、個人情報に当たるかどうかとは別に、学校や集団の現在地を知らせることには、プライバシーや安全上のリスクが残ります。政府広報も、写真の背景や学校の制服などから意図せず個人や居場所が特定される可能性を注意喚起しています。

学校のSNS運用、ルールはどうなっているのか

今回の件では、学校がSNSで情報発信すること自体の難しさも見えてきました。報道によれば、東京都教育委員会は都立学校向けにはX運用などに関するルールを通知している一方、区市町村立学校向けには都教委としてガイドラインを設けていないと説明しています。ただしこれは、区市町村立学校にルールがまったくないという意味ではなく、区市町村立学校は各自治体の教育委員会が管轄するため、自治体や学校によって運用ルールに差がある、という状況です。荒川区もこれまで、学校のSNSアカウント運用は個人情報保護などを踏まえたうえで、ある程度は各学校の裁量に任せていたとしています。

学校からの情報発信は、保護者にとって我が子の様子が分かる有益なものである一方、公開型のSNSでは想定外の形で拡散し、思わぬ議論に発展することもあります。「発信の便利さ」と「安全・プライバシー」をどう両立させるか。今回の事案は、その線引きの難しさを改めて示しました。区は再発防止に向けて教職員への指導を徹底し、情報発信のあり方を見直すとしています。

家庭・学校でできること

👋
中高生のみんなへ

修学旅行や部活の遠征で、友だちと撮った写真をその場でSNSに上げたくなること、あるよね。楽しい瞬間だし、シェアしたくなる気持ちはすごく自然だと思う。

でも今回のニュースで大事なのは、「顔さえ隠せば安全」とはかぎらない、ってこと。制服・駅・「今ここにいる」という情報がそろうと、顔が写っていなくても「どこの学校の子が、いま、どこにいるか」が他人に読み取れてしまうんだ。

「今ここにいる」を発信しないだけで、けっこう守れる

たとえば「◯◯駅なう!これから新幹線」みたいな投稿。楽しいけど、公開アカウントなら「自分や仲間の居場所と時間」を、知らない人にも知らせることになる。非公開でも、スクショや転送で外に広がる可能性はあるよ。投稿するなら、その場じゃなくて帰ってからにするだけで、現在地を知られる危険はぐっと下がる。

ただし、時間をずらせば何でも載せていい、というわけでもない。友だちの顔や制服、学校名まで自由に出していいわけじゃないよ。投稿する前に、写っている人にも「これ載せていい?」と確認しよう。

覚えておいてほしいこと
写真を上げる前に、3つだけ自分に聞いてみて。
①「これ、いまいる場所がバレる?」
②「制服やタグで、どこの学校か分かっちゃう?」
③「これ、帰ってからでもいいんじゃない?
迷ったら、リアルタイム投稿はやめて一晩おく。翌日もう一度見ると、「これは載せない方がいい」と気づけることもあるよ。

💬 友達や家族と話してみよう
自分がこれまで上げた写真の中に、「いつ・どこ・誰」が同時に分かるものはなかったかな? 学校の公式アカウントは、みんなの写真をどこまで出していいと思う?

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