📌 事件の概要
国民生活センターに寄せられる子どものオンラインゲーム課金トラブルの相談は年間4,024件、平均被害額は約33万円。小学生の兄弟が150万円を課金し、決済メールを削除して発覚を遅らせた事例、友達から「キャリア決済はタダ」と教わった事例、母親の指紋認証を突破した事例など、保護者が想定しない”抜け道”が次々と見つかっている。2023年度の平均支払額は小学生10.5万円、中学生19.3万円、高校生22.6万円。「見えないお金」の怖さ、ガチャの心理的なわな、ペアレンタルコントロールの設定方法、未成年者取消権の限界まで、全学年向けに解説。
何が起きたのか
「ゲームで150万円」——それは、ある日突然やってくる。
これはサイバー犯罪の話ではない。家庭の中で起きる「消費者トラブル」だ。国民生活センターに実際に寄せられた相談である。
子どもが保護者に無断でオンラインゲームに課金してしまう——このトラブルが高い水準で続いている。国民生活センターは2021年・2024年と繰り返し注意喚起を行い、2025年3月にも未成年者の消費者トラブルに関する現況調査を公表した。この問題は今も現在進行形で続いている。
経緯——相談は高い水準で推移
2016年〜2019年:トラブルが目立ち始める
スマートフォンの普及とともに、子どもがオンラインゲームに課金するトラブルが増え始めた。国民生活センターへの小中高生のオンラインゲームに関する相談は、2016年度の1,171件から2019年度には2,557件に倍増した。
2020年:コロナ禍で急増
2020年、新型コロナウイルスの影響で「おうち時間」が増え、子どもがゲームに触れる時間が大きく増えた。相談件数は3,723件に急増。
2021年8月:国民生活センターが最初の注意喚起
「スマホを渡しただけなのに…」というタイトルで、保護者向けに注意喚起を発表。150万円課金の事例などが紹介された。
2022年度:相談4,024件、平均33万円
相談件数は4,024件に達した。1件あたりの平均契約購入金額は約33万円(一部の高額事例に引っ張られた数字で、100万円以上の事例も6.5%ある)。相談ベースでの年間合計は約11億9,000万円にのぼる。相談者の内訳は小学生49.4%、中学生37.6%、高校生13.0%で、半数が小学生だった。なお、これはあくまで相談が寄せられた件数であり、相談せずに泣き寝入りしているケースを含めると、実際のトラブルはさらに多いと考えられている。
2024年3月:2度目の注意喚起
国民生活センターが「子どものオンラインゲーム 無断課金につながるあぶない場面に注意!!」を公表。あわせてゲーム業界団体やアプリストア運営事業者に対して要望も行った。
2025年3月:現況調査で深刻さが裏付けられる
国民生活センターの調査で、2023年度の小学生の相談(2,662件)の8割がオンラインゲーム関連だと判明。平均支払額は小学生が約10万5,000円、中学生が約19万3,000円、高校生が約22万6,000円にのぼった。
こんなことが実際に起きている——4つの事例
事例① 150万円課金、決済メールを子どもが削除
大型連休中、小学生の息子2人が家族共有のタブレットでオンラインゲームを遊んでいた。タブレットには父親のクレジットカード2枚が登録されていた。
4月末ごろから子どもたちが「課金させて」と言わなくなったので不思議に思っていたが——実は勝手に課金していた。
カード会社からの決済完了メールはタブレットに届いていたが、子どもたちがメールを「ゴミ箱」に入れていたため、請求書が届くまでまったく気づかなかった。被害額は150万円以上。
(国民生活センター、2021年公表の事例より)
事例② 「キャリア決済はタダ」と友だちに教わった小学生
小学生の子どもが、友だちから「キャリア決済を使うとお金がかからないよ」と教えられた。
子ども自身も「お金がかかっている」とは思っていなかった。しかしキャリア決済は携帯電話の料金と一緒に請求される仕組みで、もちろんお金はかかっている。
設定によってはパスワードなしで簡単に決済でき、決済完了メールにも保護者が気づかなかったため、わかったときには高額な請求になっていた。
事例③ 指紋認証を突破した小学生
母親の古いスマホを自宅のWi-Fiにつなげて息子に使わせていた。課金には母親の指紋認証が必要な設定にしていたが——
母親のアカウントにログインしたまま端末のロックも解除された状態だったため、息子が設定画面から自分の指紋を追加登録。約5万円が課金されていた。
事例④ 年齢を偽って「20歳以上」を選択
1回だけ課金するために保護者がスマホにクレジットカードを登録。その後、カード情報を削除し忘れた。
小学生の子どもが年齢確認画面で「20歳以上」を選択して、1カ月半で30万円以上を課金していた。
※年齢を偽って課金した場合、「詐術」と判断され返金が認められない可能性がある
なぜ高額になる?——課金の仕組み
🎮 オンラインゲーム課金の3つの仕組み
①「ガチャ」のわな
ゲーム内のアイテムやキャラクターをランダムで手に入れる仕組み。1回は数百円でも、ほしいものが出るまで何十回も回してしまう。「あと1回で出るかも」——この気持ちが止められなくなる。「何が出るかわからない」というワクワク感(心理学でいう「ランダム報酬」)は、人間の脳がもっとも熱中しやすいパターンだ。さらに、「ここまで使ったのにやめたらもったいない」という気持ち(「損失回避」)が加わり、ますます止められなくなる。
②「見えないお金」
クレジットカードやキャリア決済は、お札や硬貨を使わない。画面のボタンを押すだけで課金が完了するから、「お金を使っている」実感がない。
③「友だちもやっている」
「みんな課金してるよ」「課金しないと弱いまま」——友だちの影響で課金への抵抗感がなくなっていく。
なぜ「無断課金」は起きるのか——3つの危ない場面
⚠️ 国民生活センターが指摘する「3つの危ない場面」
場面① 保護者のスマホを、ログインしたまま子どもに渡す
保護者のApple IDやGoogleアカウントにログインした状態だと、登録されたクレジットカードで子どもが課金できてしまう。
場面② 古いスマホをWi-Fiにつなげて子どもに渡す
「もう使っていないスマホだから大丈夫」と思いきや、アカウントが残ったままになっていることが多い。
場面③ ペアレンタルコントロールを設定していない、または設定が不十分
パスワードが簡単すぎる、課金の承認をオフにしている、など。
※携帯電話会社(キャリア)も近年は対策を進めており、キャリア決済の上限額の初期設定を低くしたり、暗証番号の入力を求めたりする仕組みが導入されている。ただし、すべてのトラブルを防げるわけではない。
お金は返ってくる?——法律のルール
⚖️ 「未成年者取消権」とは?
民法では、未成年者が保護者の同意なく契約した場合、その契約を取り消すことができるとされている。
ただし、次のような場合は取り消しが難しくなる:
❌ 保護者のアカウントで課金した場合
→ アカウントの持ち主(保護者)が課金したとみなされることがある。
❌ 年齢をごまかして「成人です」と申告した場合
→ 「詐術」(うそをついて相手をだますこと)と判断され、取り消しが認められない可能性がある。ただし個別の事情によって判断が分かれる。
つまり、「後から返金してもらえるから大丈夫」ではない。
教訓
①「無料ゲーム」は本当に無料ではない
「基本無料」のゲームは、課金してもらうことで利益を上げている。ゲームの設計そのものが「課金したくなる仕組み」になっている。
②「見えないお金」は使いすぎやすい
お札を使うときより、画面のボタンで払うときのほうが、お金を使っている実感がない。だからこそ、自分で「いま○○円使った」と数える習慣が大切。
③「設定したから大丈夫」では足りない
指紋を追加登録した事例、パスワードを変更した事例——子どもは保護者が思っている以上にデジタル機器の操作にくわしい。技術的な設定だけでなく、「なぜ勝手に課金してはいけないのか」を話し合うことが必要。
④隠すと問題は大きくなる
150万円の事例では、子どもたちが決済メールを削除して発覚を遅らせた。早く相談していれば、被害額はもっと少なくて済んだかもしれない。
⑤ これは「お金の教育」の問題でもある
ゲーム課金のトラブルは、「ネットの使い方」だけでなく「お金の使い方」の問題でもある。キャッシュレス時代に、お金の価値を実感する力はますます大切になる。
考えてみよう
- ゲームのガチャで「あと1回だけ」と思ったことはある? そのとき、どうした?
- 「基本無料」のゲームは、なぜ無料で遊べるのだろう? ゲーム会社はどうやってお金をかせいでいると思う?
- もし課金のルールを家族で決めるとしたら、どんなルールがいい?
- 「33万円」は何に使えるお金だろう? ほしいものに換算してみよう。
- 課金してしまったことを保護者に言えないとき、どうすればいいと思う?
私たちができること
🛡️ 保護者ができること
① スマホを渡すときは必ずログアウト
自分のアカウントにログインしたままスマホを渡さない。古いスマホを渡すときも同じ。
② ペアレンタルコントロールを設定
子ども専用のアカウントを作り、課金には保護者の承認が必要な設定にする。
③ クレジットカード情報は残さない
1回だけのつもりでカード情報を入力しても、使い終わったら必ず削除。
④ キャリア決済の上限額を下げる
携帯電話の契約時にキャリア決済の上限を最低にしておく。
⑤ 決済メール・明細を定期的にチェック
メールは子どもに削除されることもある。カード明細もあわせて確認する。
🎮 子ども自身ができること
① 「課金=お金を使っている」と意識する
ゲーム内の「購入」ボタンを押すことは、コンビニでお菓子を買うのと同じ。画面の向こうで本物のお金が動いている。
② 「あと1回」が一番危ない
ガチャで「あと1回だけ」と思ったとき、すでにたくさんのお金を使っていることが多い。「止められない」と感じたら、それ自体が危険なサインだ。
③ 「みんなやっている」は理由にならない
友だちが課金していても、自分がやるかどうかは別の話。お金は自分の(家族の)もの。
④ 困ったらすぐ保護者に相談
「怒られるから言えない」ではなく、言えないまま金額が増えていくほうがもっと大変なことになる。事例①のように決済メールを削除して隠すのは、問題をさらに大きくするだけ。
📞 トラブルが起きたら
消費者ホットライン 188(いやや!)
最寄りの消費生活センターにつながる。未成年者取消権による返金の相談もここで。
警察相談専用電話 #9110
対象年齢
📚 全学年(小学生・中学生・高校生)
オンラインゲームの課金トラブルは、相談の約半数を小学生が占めている。スマホやタブレット、ゲーム機を使い始める年齢が早まっている今、小学生のうちから「課金とは何か」「見えないお金の怖さ」を知っておくことが大切。中学生・高校生は自分で判断する場面が増えるからこそ、法律の知識(未成年者取消権とその限界)も知っておきたい。
用語メモ
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 課金 | ゲーム内でアイテムやキャラクターなどを買うためにお金を払うこと。「アプリ内課金」「ガチャ課金」などの形がある。 |
| ガチャ | お金を払ってランダムにアイテムやキャラクターを手に入れる仕組み。何が出るかわからないため、ほしいものが出るまで繰り返しやすい。 |
| キャリア決済 | 携帯電話会社のIDとパスワードで商品を買い、代金を携帯電話の料金と一緒に支払う方法。パスワードなしで使える設定になっていることもある。 |
| ペアレンタルコントロール | 保護者が子どもの端末の利用を制限・管理する機能。課金の制限、アプリの利用時間の制限などができる。 |
| 未成年者取消権 | 民法で定められた、未成年者が保護者の同意なく行った契約を取り消せる権利。ただし保護者のアカウントでの課金や年齢を偽った場合は認められないことがある。 |
| 詐術 | うそをついて相手をだますこと。年齢確認で「20歳以上」を選ぶなど、未成年者が成人であるかのように見せかけた場合、契約の取り消しができなくなる可能性がある。判断は個別の事情による。 |
| 国民生活センター | 消費者トラブルの相談・調査・注意喚起を行う独立行政法人。消費者ホットライン「188」で相談できる。 |
📚 参考資料・関連記事
この問題について、以下のサイトでくわしく知ることができます。
📰 ニュース記事・メディア
-
🔗日本経済新聞
親の目盗み100万円課金も、スマホゲームで相談年4000件(2024年3月18日) -
🔗INTERNET Watch
注意していたのに子どもがゲームで無断課金…トラブル事例と対策を国民生活センターが発表(2024年3月13日) -
🔗ケータイ Watch
子どものオンラインゲーム無断課金に注意、国民生活センターが呼びかけ(2024年3月14日) -
🔗東京すくすく(東京新聞)
子どものゲーム課金で高額請求、取り消しは可能?
📖 公的機関・相談窓口
-
🔗国民生活センター
子どものオンラインゲーム 無断課金につながるあぶない場面に注意!!(2024年3月13日) -
🔗国民生活センター
「スマホを渡しただけなのに…」子どものオンラインゲーム課金のトラブルを防ぐには?(2021年8月12日) -
🔗消費者庁
オンラインゲームの課金トラブルにご注意ください!
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