推しのAI画像、軽い気持ちで上げてない?──2か月で4万件、芸能人肖像の無断使用
生成AIで芸能人や声優の肖像・声を無断利用した「侵害が疑われるSNS投稿」が、約2か月で4万件超確認された(NPO調査)。総閲覧数は延べ約3億3500万回、損失20〜45億円と推計。法務省は今夏にも、現行法での民事責任の判断基準を指針として整理予定。無断使用が必ず侵害になるとは限らない理由や、投稿前の確認ポイントを
好きな芸能人や声優の顔や声を、AIで画像や動画にしてSNSに上げる──軽い気持ちでやっている人もいるかもしれない。
でもいま、その投稿が権利侵害として問題になっている。あるNPOの調査では、芸能人・声優の顔や声をAIで利用した「権利侵害が疑われる投稿」が、約2か月で4万件超確認された。
🟨 この記事のポイント(1分で理解)
- 生成AIで芸能人・声優の顔や声を無断利用した「侵害が疑われるSNS投稿」が、約2か月で4万件超確認された(NPO調査)
- 総閲覧数は延べ約3億3500万回。経済的損失は20〜45億円と推計(裁判で認定された被害額ではなく、一定の方法による試算)
- 有名人の顔や声を無断で使うことは、肖像権やパブリシティ権の侵害になる可能性がある。ただし無断使用がすべて直ちに侵害になるわけではなく、使い方によって判断される
- 法務省は、現行法で「どんな場合に民事上の責任(損害賠償)が生じるか」の判断基準を、今夏までに指針として整理する予定
2か月で4万件超──何が確認されたのか
NPO法人「肖像パブリシティ権擁護監視機構」の調査によると、2025年6月下旬からの約2か月間に、日本の著名な芸能人・声優の肖像や声をAIで無断利用したとみられるSNS上の画像・動画が、延べ4万件超確認された。これらは裁判で侵害と認定されたものではなく、投稿の文言などからAI製とみられ、本人が肖像などを独占的に利用できる「パブリシティ権」の侵害が疑われる事案として抽出されたものだ。総閲覧数は延べ約3億3500万回、経済的損失額は約20億〜45億円と推計されている(著作権侵害の損害額の推定方法を参考にした試算で、実際に確認された売上減少額ではない)。
調査対象は2025年夏の投稿だが、その結果が2026年6月に公表され、後述する法務省の検討とあわせて改めて注目されている。同機構の相沢康幸理事長は、投稿者は遊びのつもりでも、見た人が事実として受け取り、その芸能人のイメージダウンにつながる恐れがあると指摘している。
なぜ重要なのか
スマホ1台あれば、誰でも他人の権利を傷つける投稿を作れてしまう時代になった。
生成AIの普及で、いまや特別な技術がなくても、有名人そっくりの画像・動画・音声を誰でも簡単に作れる。その多くは、作った人にとっては「ファンアート」や「ちょっとした遊び」のつもりだ。ただ、ここで起きる問題は、大きく2種類に分かれる。
ひとつは、本物だと誤解されることで起きる被害。その芸能人が実際には言っていない発言や、していない行動を「やった」と誤認させ、なりすまし・デマ・名誉や信用の毀損につながる。もうひとつは、人気や知名度を利用されることで起きる経済的な被害。顔・名前・声が持つ「顧客吸引力」(人を引きつけ、商品を売る力)を勝手に使って、閲覧数・広告収入・商品の販売につなげる使い方で、これが主にパブリシティ権の問題になる。
さらに、本人の写真を性的に加工する「ディープフェイク」は特に深刻だ。この種の被害は有名人だけでなく、加工された一般の人にも及ぶ。
「肖像権」「パブリシティ権」とは何か
肖像権──誰もが持っている権利
肖像権は、自分の顔や姿を、正当な理由なく撮影・公開されたり、みだりに利用されたりしない利益を守る考え方だ。有名人かどうかに関係なく、すべての人に関係する。ただし、無断利用がすべて直ちに違法になるわけではなく、撮影・公開の目的、場所、本人が受ける不利益などを踏まえて判断される。クラスメイトの顔をAIで加工して勝手に投稿するような行為は、この肖像権の侵害になりうる。
パブリシティ権──有名人の「経済的価値」を守る権利
パブリシティ権は、名前や姿が「顧客吸引力」を持つ芸能人などの、その経済的価値を独占的に利用できる権利だ。最高裁判所が「ピンク・レディー事件」の判決(平成24年)で正面から認めた。ただし、無断で使えば必ず侵害になるわけではない。肖像そのものを鑑賞対象の商品にする、広告に使う、商品を目立たせるために付けるなど、専らその人の顧客吸引力を利用する目的がある場合に侵害と判断される。実際、ピンク・レディー事件では写真が無断掲載されていたが、パブリシティ権の侵害は認められなかった。
注意したいのは、これらは判例(裁判所の判断の積み重ね)によって確立した権利で、法律に明文の規定がない点だ。生成AIによる無断利用をまとめて規制する専用の法律も、まだ整備されていない。ただし「何をしても自由」という意味ではなく、使い方によっては、民法上の不法行為(709条)、肖像権、パブリシティ権、著作権法、不正競争防止法、名誉毀損など、既存の法律や権利が適用されうる。経済産業省も2025年に、著名人の肖像を使って画像を生成し販売した場合は不正競争防止法違反にあたりうる、との見解を示している。
そのうえで法務省は2026年4月、「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」を設置した。現行の法律と判例を踏まえ、どんな場合に民事上の責任(損害賠償)が生じるのか、その判断基準を整理し、今夏までに指針としてまとめる予定だ。声がパブリシティ権・肖像権の保護対象にどう含まれるかも論点になっている。法的な線引きは今後さらに明確になっていく可能性がある。
家庭・学校でできること
- 「AIで作れること」と「作ってよいこと」と「公開してよいこと」は、それぞれ別、という線引きを一緒に話してみる。
- 公開せず自分だけで楽しむ場合と、SNSに投稿する場合では、問題の大きさが異なる。ただし「何を作っても自由」という意味ではない。本人を傷つける画像・性的な画像・他人の作品をそのまま使った画像などは、作成や保存の段階から深刻な問題になりうる。
- 「AI生成です」「ファンメイドです」と表示することは、見る人の誤解を減らすために重要。ただし、その表示を付ければどんな画像や声でも公開してよいわけではなく、利用目的や内容によっては本人の権利を侵害する可能性が残る。
- 被害は有名人に限らない。同級生の顔を勝手にAI加工して投稿することの重大さ(肖像権侵害、名誉やプライバシーへの加害)を伝える。
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中高生のみんなへ
好きな芸能人や声優の顔や声を、AIで再現してみたい、と思うことがあるかもしれない。でも、AIで作れることと、それをSNSで公開してよいことは、同じじゃないんだ。
特に注意が必要なのは、本物の写真や映像に見えるもの、本人が言っていない言葉を話させたもの、性的に加工したもの、本人の人気を使って再生数やお金を集めようとするものだ。内容によっては、肖像権・パブリシティ権・名誉・プライバシーなど、いくつもの問題が重なることがある。
「AIで作った」と書けば大丈夫?
「AI生成」「ファンメイド」と書くことは、見る人が本物だと勘違いしないために大切。でも、その表示さえ付ければ、どんな画像や声でも公開してよいわけじゃない。本人の顔や声をどう使ったか、本人を傷つける内容じゃないか、人気を利用してお金や閲覧数を集めていないかによって、問題になることがあるんだ。
そしてこれは、有名人だけの話じゃない。クラスメイトの顔を勝手にAIで加工したり、言っていないことを話す動画を作って共有したりすれば、相手を深く傷つける加害になる。グループ内だけの投稿でも、保存や転送をされれば完全には消せない。
投稿する前の3つの確認
① 本人が本当に言った・したことだと誤解されないか
② 本人や周囲の人を傷つける内容ではないか
③ 自分が同じものを作られて公開されても平気か
少しでも迷ったら、そのまま投稿せず、家族や先生など信頼できる人に相談しよう。
💬 友達や家族と話してみよう
推しのAIファンアートって、どこまでがOKで、どこからがダメだと思う?「自分が作られる側」だったら、どう感じる?
関連情報・参考リンク
このニュースについて、さらに詳しく知るための情報です。
📰 元記事・関連ニュース
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🔗読売新聞オンライン(Yahoo!ニュース)
芸能人や声優の肖像や声を無断使用、生成AIで作った画像・動画が2か月で4万件超…損失推計20億〜45億円(2026年6月) -
🔗時事ドットコム
AI利用、「声」も保護対象に 有識者検討会が初会合―法務省(2026年4月) -
🔗日本経済新聞
生成AIによる肖像・声の無断使用、民事責任の範囲整理へ 法務省(2026年4月)
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