📌 事件の概要
2019年11月、大阪市の小学6年生の女の子が、オンラインゲーム「荒野行動」やTwitterを通じて知り合った35歳の男に誘い出され、約600キロ離れた栃木県で監禁された事件。女の子は6日後に自力で脱出し保護された。男には懲役20年の判決。ゲームのボイスチャットやSNSのDMが犯罪の入り口となった、子どものネット利用の危険性を示す象徴的な事件。
何が起きたのか
2019年11月、大阪市に住む小学6年生の女の子(12さい)が、オンラインゲームやSNSを通じて知り合った35さいの男に誘い出され、約600キロメートルもはなれた栃木県まで連れ去られるという誘拐事件が発生した。
女の子は人気のバトルゲーム「荒野行動」で男と知り合い、その後TwitterのDM(ダイレクトメッセージ)でやり取りするようになった。男は「うちに女の子がいる。話し相手になってほしい」とやさしい言葉で誘い出し、女の子のスマホや靴を取り上げて自宅に監禁した。
6日後、女の子は靴下のまま男の家から逃げ出し、近くの交番にかけこんで保護された。男の家からは、別の県から連れてこられた女子中学生も見つかった。2022年の裁判で、男には懲役20年の判決が言い渡された。この事件は、オンラインゲームが子どもを狙った犯罪の入り口になりうることを社会に知らしめた。
経緯・タイムライン
2019年11月17日(日)朝
- 女の子は朝7時ごろ、お母さんといっしょに朝ごはんを食べる
- 午前11時ごろ、お母さんが目を覚ますと女の子の姿がない
- 午後10時、お母さんが警察にとどけ出る
11月17日〜19日
- 大阪府警が延べ170人の捜査員を出して捜索
- 家出と事件の両面から調査するも、防犯カメラに映らず手がかりなし
- 女の子は男とともに大阪から栃木県へ移動していた
11月19日(火)
- 警察が家族の了承を得て、女の子の写真を公開
- 広く情報提供を呼びかける
11月23日(土)
- 女の子が栃木県小山市の交番にかけこみ、無事に保護される
- 靴下のまま男の家から逃げ出した
- 栃木県警が男(35さい・無職)を未成年者誘拐の容疑で逮捕
- 男の家から、別の県の女子中学生も発見・保護される
11月24日(日)
- 大阪府警が栃木県の男の自宅を家宅捜索
- 男は「SNSで助けを求めていた子を助けた。正しいことをした」と供述
2019年12月13日
- 大阪地検が男を起訴
2022年3月22日
- 水戸地裁で判決
- 「未熟さにつけ込んだ卑劣な犯行」として懲役20年
犯人の手口
ステップ① オンラインゲームで近づく
犯人は、小中学生に人気のバトルゲーム「荒野行動」を利用していた。荒野行動は仲間とチームを組んで戦うゲームで、「ボイスチャット」(マイクを使った音声会話)をしながらプレイするのが一般的。毎日のようにいっしょに遊び、声で話していると、相手に親近感を感じてしまう。
💡 ボイスチャットの危険性とは?
テキスト(文字)のやり取りより、声で話す方が心を開きやすくなります。また、ボイスチャットの会話は記録が残りにくいため、保護者が気づきにくいという問題もあります。
ステップ② SNSでつながる
ゲームで親しくなった後、TwitterなどのSNSでもつながるのはよくあること。「#荒野行動フレンド募集」などのハッシュタグを使って仲間を見つけ、SNSのアカウントを交換するケースが多い。
ゲームの外のSNSでつながると、DM(ダイレクトメッセージ=他の人には見えないメッセージ)で二人だけのやり取りが始まる。ここから個人情報が漏れたり、会う約束につながったりする。
ステップ③ やさしい言葉で誘い出す
犯人は女の子に「うちに女の子がいる。話し相手になってほしい」とメッセージを送った。「助けてあげたい」「困っている子がいる」など、やさしそうな言葉で子どもの善意につけ込むのが特徴的な手口。
ステップ④ 逃げられなくする
男は女の子を自宅に連れ込んだ後、スマホと靴を取り上げた。連絡手段と移動手段を奪うことで、助けを求められない状況を作り出した。女の子は監禁中、男の家のパソコンでYouTubeを見て過ごしていたという。
なぜ子どもがだまされてしまうのか
1. ゲームの中で「友だち」になったと思いこむ
オンラインゲームでは、毎日のようにいっしょに戦い、声で話し、同じ目標に向かって協力する。この体験を共有すると、相手のことを「友だち」だと感じてしまう。しかし、相手が本当はどんな人かは、画面の向こうからは分からない。年れいや性別、名前をうそをつくのはかんたんなこと。
2. 保護者の目がとどかない
この事件では、お母さんはSNSの投稿をチェックしていた。しかし、TwitterのDMの中身までは確認していなかった。また、ゲーム内のボイスチャットは記録が残りにくく、保護者が内容を把握するのはとてもむずかしい。
3. 対象年れいより低い子どもが利用していた
女の子は10さいの頃から荒野行動をプレイしていた。しかし、このゲームの対象年れいはApp Storeで「17+」(17さい以上)、Google Playで「16+」(16さい以上)。対象年れいよりもずっと低い子どもが、大人と同じ空間で遊んでいたことが事件の背景にある。
結果・影響
被害者への影響
- 小学6年生の女の子が6日間にわたり約600キロ離れた場所に監禁された
- スマホと靴を取り上げられ、逃げられない状態に置かれた
- 別の県から連れてこられた女子中学生も被害にあっていた
- 女の子は自力で交番に逃げ込み、命に別状はなかった
犯人への処罰
- 未成年者誘拐罪などで起訴
- 懲役20年の判決(2022年3月、水戸地裁)
- 裁判長は「未熟さにつけ込んだ卑劣な犯行」と断じた
社会への影響
- オンラインゲームが子どもを狙った犯罪の入り口になりうることが広く知られた
- ボイスチャットの危険性が社会的に認識されるきっかけとなった
- 文部科学省や警察庁が、ゲームを通じた犯罪への注意喚起を強化
- 多くの自治体・教育委員会がオンラインゲームの安全指導を実施
知っておきたい数字
- SNSがきっかけで犯罪被害にあう子どもは毎年約2,000人(警察庁調べ)
- 被害にあった子どものうち、約75%は子ども自身が最初に連絡を取っていた
- 被害にあった子どもの多くがフィルタリングを利用していなかった
教訓
1. ネットで知り合った人には絶対に会わない
これが一番大切なルールです。ゲームやSNSでどんなに仲良くなっても、ネットで知り合った人に会いに行くのは絶対にダメです。やさしそうに見えても、相手がどんな人かは画面の向こうからは分かりません。
この事件の犯人も、女の子に対してやさしい言葉をかけていました。しかし実際には、別の女子中学生もすでに監禁していた危険な人物でした。
2. 個人情報は絶対に教えない
ボイスチャットやDMで聞かれても、本名・住所・学校名・電話番号・写真は教えてはいけません。「どこに住んでるの?」「何年生?」という何気ない質問でも、答えることで自分の居場所が特定されてしまいます。
3. DMやボイスチャットの内容もおうちの人に共有する
SNSの投稿だけでなく、DMやボイスチャットのやり取りも保護者に見せられるようにしておくことが大切です。この事件でも、お母さんはSNSの投稿は見ていましたが、DMの内容までは把握していませんでした。
保護者の方へ:
- お子さんのSNSアカウントの投稿だけでなく、DMの利用状況も確認しましょう
- ゲーム内のボイスチャット機能の有無を把握しましょう
- 「何を話しているか」ではなく「誰と話しているか」を定期的に確認する習慣が大切です
4. ゲームの対象年れいを守る
ゲームには「○才以上」という対象年れいがあります。これは、暴力的な表現だけでなく、知らない大人とのコミュニケーション機能があるかどうかも考えて決められています。
主なゲームの対象年れい:
- 荒野行動:16〜17さい以上
- フォートナイト:15さい以上(App Store)
- Apex Legends:17さい以上
自分の年れいに合わないゲームをしたいときは、必ずおうちの人と相談しましょう。
5. 困ったらすぐに大人に相談する
「会おうよ」「住所を教えて」「写真を送って」など、少しでもこわい・おかしいと感じたら、すぐにおうちの人や学校の先生に相談しましょう。はずかしいと思わなくて大丈夫です。一人でかかえこまないことが、自分を守る一番の方法です。
6. 「ゲームの友だち」と「リアルの友だち」はちがう
学校の友だちは、毎日顔を合わせて話して、お互いのことをよく知っています。でも、ゲームの中の「友だち」は、本名も顔も年れいも本当かどうか分かりません。ゲームで楽しく遊ぶことと、相手を信用することは別のことです。
考えてみよう
- もし、ゲームで知り合った人に「会おうよ」と言われたら、どうしますか?
- ボイスチャットで相手と話しているとき、どんなことに気をつけたらいいでしょう?
- ゲームの「友だち」と、学校の友だちのちがいは何でしょう?
- ネットで知り合った人に「困っている子を助けてほしい」と言われたら、どう考えますか?
私たちができること
今すぐできる対策
- ネットで知り合った人には会わないと決める
- どんなにやさしそうでも、どんなに長く話していても、絶対に会わない
- 「会いたい」と言われたら、おうちの人にすぐ相談する
- 個人情報を守る
- 本名、住所、学校名、電話番号、顔写真は教えない
- SNSのプロフィールにも個人を特定できる情報を書かない
- おうちの人とルールを決める
- ゲームやSNSの利用時間・利用ルールを話し合う
- 新しいアプリやゲームを始めるときは、おうちの人に相談する
- DMやボイスチャットの内容を定期的に見せる
- フィルタリングを設定する
- スマホやタブレットにフィルタリング(有害サイトブロック)を設定してもらう
- ゲームのペアレンタルコントロール(保護者向け制限機能)を活用する
- 困ったときの相談先を知っておく
- おうちの人・学校の先生
- チャイルドライン(0120-99-7777):18さい以下の子ども専用の相談電話
- 警察相談ダイヤル(#9110)
用語メモ
- オンラインゲーム:インターネットを通じて、ほかの人といっしょに遊べるゲームのこと
- ボイスチャット:ゲームやアプリの中で、マイクを使って声で会話する機能。文字ではなく声でやり取りするため、親しくなりやすい
- DM(ダイレクトメッセージ):SNSで特定の相手だけに送る、ほかの人には見えないメッセージ
- フィルタリング:危険なサイトやアプリを見られないようにする設定。スマホやタブレットに設定できる
- ペアレンタルコントロール:保護者が子どものゲームやアプリの利用を制限・管理できる機能
- 荒野行動:中国の会社が作ったバトルゲーム。チームで協力して戦う。対象年れいは16〜17さい以上
📚 参考資料・関連記事
この事件やオンラインゲームの安全について、以下のサイトでくわしく知ることができます。
-
🔗警察庁
SNSに起因する子どもの被害についての統計データ(PDF) -
🔗総務省
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🔗内閣府
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🔗日本電信電話ユーザ協会
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